━━ 『特許を斬る!』知財経験34年 ・・・ 愚禿の手記 第5号 ━━
私は、『下請け』という言葉が大嫌いだ!
「下請け業者」だとか、「下請けに出す」だとか、何を偉そうに・・・
注文を出す方(注文主)が上で、受ける方(受注者)が下なのか?
笑止千万! モノ作りに上も下もないはずだ。
どちらも、消費者のためにモノを作っているのだから。
下請法や独禁法の改正で、多少は改善されたものの、優先的地位の濫用は、いまだに根広くはびこっているではないか!
「業務委託契約書」という名前で、注文主と受注者が取引契約を交わすが、その実態は、受注者に対して一方的に義務と責任を押し付けているものが多い。
金を出すのだから当たり前だ、と思っている注文主も多いようだが、トンデモナイ勘違いだ。受注者がいなければモノは作れないのだから。
受注者の代わりなんて、いくらでもいるさ、と思っている皆さん!
そんなことだから、後で取り返しのつかない事故を起こすんですよ、と言ってやりたい。
お互いが力を併せてこそ、初めていいモノが作れるのだ。
しかし、そのためには、注文主の意識改革だけではなく、受注者側の意識改革も必要なのだ。
「お上の仰る通りです」と云って、自分の身を削りながら何でもハイ、ハイと言う事を聞いているだけではいけない。
自分達は、あなたの事業パートナーだ!という意識を持ってもらいたい。
「あなたのお客様が、私のお客様だ」という意識を。
受注者のお客様は、注文主ではない。注文主のお客様が、同じように受注者のお客様なのだ!
中小企業の場合には、受注者になるケースが少なくない。
従って、注文主の言いなりに踊らされている会社も多いのではないだろうか。
このような会社こそ、意識改革が必要なのだ。
自分達は下じゃない!
同じお客様に、より良い商品を届ける事業パートナーだ!
会社規模の大小は関係ない!
対等の立場で働いているのだと。
注文主が客ではない。最終顧客こそが自分達のお客様なのだという意識を持ってもらいたい。
部品メーカは装置メーカに部品を納めているのではなく、装置の一部を納めているのだ。だから、立場も対等な同業者なのだ。
お互いが協力し合い、切磋琢磨していかないといいモノは産み出せない。
まずは、上下の壁を越えなければならない。
そのための手掛かりとして、知財戦略が大事なのだ!
一方、自分達で製造から販売までを行っている中小企業もある。
これらの会社の競争相手は、大手企業だったり、同業者だったりする。
大手に安く大量生産されると、お手上げ状態となってしまうし、同業者が現れると価格競争で利益を削ってしまう。戦々恐々の中に身を置かれた日々の連続だろう。ここもまた、意識改革が必要だと考える。
特許さえ取っておけば大丈夫!だと考えるのは正解ではない。
確かに、特許には独占権がある。
だからと云って、胡坐をかいていると痛い目に遭ってしまう。
誰もが他人の特許を絶対に使わないのであれば、特許訴訟なんて起きるはずがないのだ。
しかし、実際は・・・
昔ほどではないにしろ、色んな所で小競り合いが起きているではないか。
本当に、独占権を主張したければ、絶えず周りに気を配り、金も時間も労力も相当費やさなければならないのだ。
米国で訴訟を起こすと、費用だけでも数億円かかるケースも少なくない。
日本の場合、そこまではかからないにしても決着が着くまでに、相当な時間がかかってしまう。
やっと決着が着いた頃には、別の技術を使った新しい製品が出ていて微々たる賠償金しか入ってこない。骨折り損のくたびれ儲け、になってしまう。
これでは意味がない。
そして、何より問題なのは、訴訟をしている間、消費者に不安を与えてしまうことだ。客離れのデメリットの方が、ずっと恐ろしい。特許があるから安心だ、という意識は変えていかなければならない。
『特許は我が身を守るものではなく、お客様を守るものだから!』
ここにも、今までとは違った知財戦略が必要とされるのだ。
次回から、それぞれのケースに応じた知財戦略について考えてみたい。
しかし、忘れてもらっては困る。
どんなに優れた戦略でも、実行する人の意識が変わらない限り無意味だということを。意識改革の話を先に出したのは、このためである。
それでは、また。
★ 編集後記
知り合いの大学生から、このメルマガに対して貴重なアドバイスを頂戴しました。メルマガデビューの私にとって、非常にありがたいことです。
読みやすくて、分かり易いメルマガになるよう努力してまいります。