━━ 『特許を斬る!』知財経験34年 ・・・ 愚禿の手記 第10号 ━━
『就活塾』といえば、履歴書の書き方や面接の受け方など、会社に入るための知識やマナー等を教えるところが多いようだ。
会社に入るのは勿論大事だが、それより大事なのは、入った後
・どのように生きていくか!
・どのように自分を伸ばしていくか!
を、教えることではないだろうか。
日本の社会では、小学教育は中学に入れるため、中学教育は高校に入れるため、
高校教育は大学に入れるため、大学教育は会社に入れるため、この図式が定型化されてしまっているようだ。
教育カリキュラムも、次のステップの入り口を目標にしているものが多く、
入れてしまえば、後は本人任せか、入れた方の責任としか考えられていない。
やはり、欧米のように、次のステップの出口を見据えた教育が必要だと思う。
特に、就活生にとって大切なのは、どうやって会社に入るかではなく、何のために会社に入るのか! そこで何をしたいのか! という目標を、自分の中でしっかりと定めておくこと。
そして、その目標に立ち向かっていくための力を養っておくことである。
その力とは、即ち、「問題を解決する力」なのだ。
いざ就職すると、予想もしていなかった様々な問題に直面する。しかも、その問題には、答えが用意されている訳ではない。
自分で考え、自分で答えを導き出さなければならない問題ばかりだ。そう、答えは、見つけるのではなく、考え出さなければならないのだ!
しかし、正解が用意されている問題を解くことにしか慣れていない学生には、ハードルが高すぎて戸惑いと不安の方が強く、実力を発揮できない人の方が多い。
これでは、あまりにも可哀想だ。 彼等には、一体何が必要なのか!?
会社で必要なスキルとは、与えられた問題の正解を見つけ出す能力ではなく、自らが問題を探し出して、その答えを考え出す能力である。
すなわち、直面した問題の本質(即ち、根本原因)を「見つけ出す力」と、その問題を解決するための「考える力」が必要なのだ。
しかし、学校でも、就活塾でも、この力を育成するのは難しいようだ。
そこで、『学生に特許を出させる就活塾』を発足した。
ここでは、
・自分が将来目指したい分野や仕事に関係するアイデアを自ら創造し、
(将来目標の設定)
・それを様々な角度から検証して発明のレベルにまで磨き上げ、
(物事の本質を見極める力と、答えを考え出す力の育成)
・さらに、自分の手で特許明細書を書き上げて特許庁に出願する。
(論理的思考と、権利意識の醸成)
特許出願経験のない学生が多い中で、
自分の特許第1号を創造し、それを完成させる機会を与え、目標の設定と問題解決力、そして何より将来への自信を持たせることが目的の塾である。
このメルマガの第2~4号にも書いたように、特許を経験させることで、
1)日本人に乏しい「権利意識」と、若い人に必要な「目的意識」の気付きを与え、
2)アイデアを発明へとブラシュアップする過程で、目先の問題ではなく、本当に解決しなければならない問題の根本原因を見つけ出す訓練と、逃げずに考え抜いてそれを突破する訓練を行い、
3)修正を重ねながらも、自力で特許明細書を書き上げることで、説得力のある論理的な思考と、文章作成術を身に付けさせる。
このように、たった1件の特許ではあるが、その過程で色々なことを経験し、学び取ることが出来る。
しかも、自分で考え出したアイデアを特許として権利化することも出来るのだ。
世の中にたった一つしかない自分だけの権利を・・・
その権利は、大学や就活塾に帰属されるものではない。
当然、発明者も出願人も、学生諸君本人のものなのだ。
そして、自分で考えた特許を自己アピールの武器にして、それが活かせる会社に就活すればよい。
採用された会社に、その特許を譲渡してもいいし、買ってもらってもいい。もし、その会社が興味を示さなければ、ライバル会社に売り込めばよい。
あるいは、特許を実現する会社を、自ら起業してもよい。
特許の使い途は、いくらでもあるはずだ!
特許教育を受けた新入社員のアンケートを見ると、もっと前から、学生時代にこの教育を受けた方が良かった、という人も多い。
若い人には、未知の能力がある。その能力を、どうやって引き出すかが本当の教育だと思う。
この塾を多くの学生に経験してもらいたい。そして、自分にも出来るという確かな自信を持って頂きたい。
特許を出せたという経験は、必ずその後の人生の役に立つ。自分で見つけ、自分で考え出したものだから・・・
なお、慣れない特許明細書の書き方は、添削も交えて分かり易く説明していく予定です。
それでは、また。
★ 編集後記
長い会社生活で、自分が経験した出来事や、そこから得た数々の教訓も塾生に伝えていきたいと思っています。
臆せずに挑戦して下さい。
埼玉大学理工学部電気工学科卒
日本電気株式会社に入社。以来34年間知的財産及び企業法務に従事し、 特許技術部長、知財法務事業部長、監査役を歴任。在籍中は、多くの国内及び海外企業との知財関連訴訟やライセンス契約の責任者として事件解決や紛争処理に努め、一方で「取得」主体の知財活動から「活用」に主眼を置いた知財戦略や知財活動、教育の改革に取り組む。また、企業法務の責任者として、コンプライアンスやコーポレートガバナンスの管理・運用に従事。半導体事業及びパソコン等のパーソナル事業に精通。