知財と教訓

知財の教訓企業で知財業務35年の経験者が伝えたい知財戦略(知略)のヒント

知財改革への取り組み (その5):第14号

2014年2月17日

━━ 『特許を斬る!』知財経験34年 ・・・ 愚禿の手記 第14号 ━━

 

少し前の話だが、大手ゲームメーカのセガ(SEGA)が、

 

ゲームソフト『イナズマイレブン』の制作・販売を行っているレベルファイブを提訴したとの報道が流れた。

 

イナズマイレブンが、セガの特許を無断で侵害しているというのが提訴の内容である。

 

いわゆる、一般的な特許侵害訴訟事件と言える。

 

報道等では、9か月間にわたって交渉を重ねたが、埒があかず訴訟に踏み切ったとされている。

 

セガの特許は、タッチパネルを操作して画面上のキャラクターの移動を制御するもので、最近のゲームソフトではよく見られるもののようである。

 

これに対して、提訴されたレベルファイブ側は、裁判で

 

  • セガの特許は、当時から知られている技術であって、

特に目新しいものではなく、特許として認められる

べきではない(俗にいう、特許無効の主張)。

 

  • そして、仮にセガの特許が有効であったとしても、

イナズマイレブンのゲームは、その特許を使ってはいない

(俗にいう、特許非侵害の主張)。

 

の2点で反論しているようだ。

 

これを見る限りは、ごく一般的な特許訴訟と言えるだろう。

 

訴訟で使われているセガ特許を見たが、法廷では、かなり細かな技術論争が繰り広げられることが予想される。黒か白かは、裁判所の判断に任せるとしよう。

 

ただ、レベルファイブ側は、

 

セガの特許が登録される前からイナズマは既に販売されており、後からクレームをつけ訴訟を起こすのは、法律問題は別として同業界の一端を担う者として違和感を覚える、

 

との見解を公式表明しているとの一部報道やインターネット情報が掲載させているが、

 

本当にそう思っているのであれば、特許権に対しての認識が未熟すぎると云わざるを得ない。

 

登録は発売後であったとしても、出願は発売前に済ませてあるから、この点に関しては法律問題を別にはしないで頂きたい。

 

 

まあ、それはさておき、この訴訟が明るみに出た以上、事件が一般消費者の目に留まるのは何等不思議なことではない。

 

しかし、レベルファイブは、この訴訟が消費者に与える影響については、少しも考慮していない。

 

消費者は、他でもない彼らのお客様なのに。

 

ゲームを楽しんでいる子供たちは、販売差止めという言葉を聞けばどう感じるだろうか。

 

戸惑い、嘆き悲しむ子供たちの顔が、見えていないのだろうか・・・

 

確かに、訴訟提起から約2か月後の、2012年12月12日付けの公式見解書を見ても、ユーザに対する気配りは全くなされていなかった。

 

まるで、提訴された自分たちが被害者であるかのようなコメントにしか見えない。

 

一体、ユーザをどう守っていくつもりなのだろうか?

 

「誠に遺憾ながら法廷で争う結果となりましたが、お客様にはご迷惑をおかけ致しません。ご安心下さい。」の一言ぐらいは、最低でも必要なのに。

 

それが嫌なら、9か月と云わずもっともっと交渉を重ねる戦略を取らなければならないはず。

 

相手が勝手に仕掛けてきたことだから仕方がない。負けたら、その時ユーザには謝ろう。

 

もしも、このような考えを持っているとするならば、お客は逃げていくだろう。

 

特許訴訟は、ユーザから見れば、原告も被告もどちらも加害者なのである。

 

決して、そのことを忘れてはならない。

 

事業運営の基本として、深く刻んでおいていただきたい。

 

企業人としての知財意識改革の必要性を強く感じる事件である。

 

因みに、セガも、勝訴して販売停止にでもしたら、イナズマのユーザから不買運動を起こされるかも知れないので、ご用心を!

 

それでは、また。

 

★ 編集後記

 

給料は、誰から貰っているのですか?

会社ではありませんよ! お客様から頂いているのです。

知財法務コンサルタント
堤 卓一郎

埼玉大学理工学部電気工学科卒
日本電気株式会社に入社。以来34年間知的財産及び企業法務に従事し、 特許技術部長、知財法務事業部長、監査役を歴任。在籍中は、多くの国内及び海外企業との知財関連訴訟やライセンス契約の責任者として事件解決や紛争処理に努め、一方で「取得」主体の知財活動から「活用」に主眼を置いた知財戦略や知財活動、教育の改革に取り組む。また、企業法務の責任者として、コンプライアンスやコーポレートガバナンスの管理・運用に従事。半導体事業及びパソコン等のパーソナル事業に精通。