━━ 『特許を斬る!』知財経験34年 ・・・ 愚禿の手記 第22号 ━━
最近、テレビや新聞で高級ブランドの偽物の話題が盛んに報じられている。
先日の読売新聞には、偽ブランド品が日本を標的にしている記事が掲載されていた。それによると、
財務省の調べで、昨年税関で差止めされた偽物商品は、2万8135件で過去最悪を記録したとのこと。
被害推定総額は約130億円で、中国からの輸入品が9割以上を占めているそうだ。
これを見た時、かつて中国の浙江省で自社製品の偽造品が出回っているとの情報が舞い込んで来た時のことを思い出した。
偽造されていたのは中身のないサーバの筐体だけで、しっかりと社名が刷り込まれている写真が送られて来た。
悲しいことに、そのサーバの筐体はゴミ箱として販売されていた。
社名さえなければ、静観する手もあったのだが、堂々と社名が入っているゴミ箱をそのまま放置する訳にもいかず、
商標権侵害を事由に、中国の弁護士経由で警察当局に差し押さえを要請した所、
警察が踏み込んだ時には、その店の店名が変わっていたらしく、差し押さえが出来ないとのことであった。
恐らくガサ入れ情報が洩れて、前日に店名だけを変えたようだ。店員は同一人物だったが、店名不一致を理由に強制執行不可との連絡があった。
日本では通信機器メーカでも、浙江省ではゴミ箱製造メーカになってしまった事件。
中国相手に、一筋縄ではいかないことを改めて思い知らされた苦い経験だった。
ともあれ、日本では、偽ブランドの取り締まりは昔から行われているのに、撲滅する有効な切り札がないまま、いたちごっこを繰り返しているようだ。
安物の偽ブランド品購入者がなくならない限り、偽物業者も後を絶たないということだろう。
やはり、決め手は消費者の真贋判定の眼力に頼るしかないのかも知れない。
興味を惹いたので、特許庁の電子図書館(IPDL)で、2000年1月1日から2014年3月31日に公開された特許を、『真贋+判定』でキーワード検索してみた所、なんと、986,029件ヒットした。
恐らく、真贋判定特許は100万件を軽く超えているだろう。
特許出願されている判定技術は、大別して3通り。
しかし、これほど多くの特許が出願されているのに、何故いたちごっこの繰り返しなのだろうか?
思うに、出願されている特許は、その殆どが自社製品の真贋判定にのみ特化されたものばかりなのではないかと。
従って、報道されているようにヴィトンやエルメスのような伝統的なブランドではなく、最近有名になったブランド品が次々と狙われているのだと推測される。
そして、これは取りも直さず、出願されている特許に汎用性がないことを意味しているものと考えても、不思議ではない。
多くの商品に共通に使える真贋判定のアイデアを考え、いち早く実用化出来れば、もしかしたら、億万長者も夢ではないのかも知れない。
スマホをかざせば、誰にでも真贋判定出来るような・・
優秀な特許の条件として、「汎用性」は欠かせない条件なのだ。
汎用性のある特許とは、決して複雑怪奇な技術ではなくシンプルな技術であることが肝要!!
それでは、また。
★ 編集後記
本物より格安なブランド品は偽物と疑って間違いないはず。なのに、それが売れるのは、偽物と知りつつ購入するからでしょう。
本物は高くて手が出ない、でも手にしてみたい。このようなファンに本物ブランドメーカは、どんなサービスをするべきなのでしょうか?