知財と教訓

知財の教訓企業で知財業務35年の経験者が伝えたい知財戦略(知略)のヒント

技術戦略と知財戦略の関係について 他人と同じではダメ!:第42号

2014年9月15日

━━ 『特許を斬る!』知財経験34年 ・・・ 愚禿の手記 第42号 ━━

 

企業というものは、それがどのような企業であれ 必ず『成長期→安定期→衰退期』という軌跡をたどる、と云われている。

 

確かに、その通りかも知れない。

 

ただ、私は、この軌跡をたどるのは、『企業』ではなく『事業』だと考えている。

 

どんな事業でも、成長期から安定期を経て、やがては衰退していく。

 

しかし、その事業の衰退期に、新たな事業を見つけ育てた企業は、生き延びていけるだろう。

 

潰れない企業(会社)とは、市場ニーズの変化に対応できる事業を持っているか、あるいは、新たな市場ニーズを創造できる事業を次々と産み出していける企業である。

 

一方、衰退期に入った事業に固執し続ける企業(会社)は、その事業の衰退とともに消え去っていくのは確かだ。

 

かつて、日本のパソコンが安定期から衰退期を迎え、スマートフォンが台頭し始めた頃、よくこんな議論がなされた。

 

「パソコンは、いずれスマホに取って代わられる時代が来るのではなかろうか?」

 

その時、パソコンをやっている人が必ず口にしていた言葉は、「スマホは、画面サイズで絶対にパソコンには勝てない。」

 

この言葉の裏には、『大きい方が見易いに決まっている』、『パソコンがそう簡単に負けるわけがない』という考えが神の如く存在していたのだ。

 

しかし、実際はどうであろうか?

 

老若男女、誰もがスマホを必需品の如く使いこなしている時代に変わっていった。

 

パソコンの驕り・・・

 

それは、人は見やすい方を選択するはずだ、という固定観念に捉われすぎていたことではないだろうか。

 

事実、画面サイズが小さくても、消費者はスマホを選び、そして、その小さな画面に自らが慣れて行ったのだ。

 

人間をはじめ生き物には、環境の変化に順応していく力がある。

 

たとえ画面が小さくても、持ち運びし易いスマホに興味を持ち、その環境の中で知らずと自分を変えていくことができた証こそが、今のスマホ環境を作り出したと云えよう。

 

パソコン業界もやっとタブレットを投入したが、果たしてスマホ市場を奪還できるだろうか・・・!?

 

そのうち、会社の仕事でも、パソコンよりスマホを使うようになる日が近いのかも知れない。

 

「事業」の衰退期にあって、固定観念にあまり固執し過ぎると

「企業」も衰退してしまうことに注意すべきである。

 

もう一つ、

 

事業の成長→安定→衰退というサイクルの中で、誰もが同様に採る技術戦略があることに注目したい。それは、

 

成長期から安定期にかけては、誰もが「高速や高機能」といった「高」戦略を採る。そして、

 

安定期から衰退期に至っては、「低価格や低電力」の「低」戦略に方向転換するのだ。

 

更に、高→低に戦略転換してしばらくすると、リストラが始まるのである。

これは、ある意味、理に適っているといえるのかも知れない。

 

従って、高から低へと戦略転換される時が、次の事業を立ち上げるタイミングとも云えるのではないか。機を逸すると後の祭りになりかねない。

 

しかしながら、知財戦略はそうではない。

 

「高の時に低を」、「低の時に高を」先取りした特許を取っておく必要があるのだ。

 

さもなければ、他人と同じようなアイデアを、他人と同じような時期に出願する羽目になるから・・・

 

これでは、使い物にならない特許の山を築くだけになってしまう恐れがある。

 

知財戦略には、『一歩先行』が必要だということを心に留めておいていただきたい。

 

そして、この『一歩先行』で大切なことは、単に『低』の先取りではなく、

「高の技術を活かしつつ低を図る」ことである。

 

例えば、

 

高機能化や高速化を追求すると消費電力がバカにならなくなってくる。すると、パワーセーブと呼ばれるような技術で電力消費を抑えるアイデアが出てくる(高から低への戦略転換)。

 

この時に大切なことは、

 

パワーマネジメント(コントロール)のように、不要な時、不要な場所だけパワーセーブすることで、

 

「高」のパフォーマンスを落とさないように一工夫しておくことである。

 

これが出来れば、特許は必ず強力な武器となるだろう。

 

それでは、また。

 

★ 編集後記

 

スマホを使い始めた頃、拡大機能を使って画像を眺めても何かピンとこない感じがありました。

 

後でパソコンで見ればいいという安心感から、その場をスルーする癖がついたのですが、後からパソコンでじっくり見た経験は数える程もありません。

 

皆さんも同じような経験をお持ちなのでは・・・?

知財法務コンサルタント
堤 卓一郎

埼玉大学理工学部電気工学科卒
日本電気株式会社に入社。以来34年間知的財産及び企業法務に従事し、 特許技術部長、知財法務事業部長、監査役を歴任。在籍中は、多くの国内及び海外企業との知財関連訴訟やライセンス契約の責任者として事件解決や紛争処理に努め、一方で「取得」主体の知財活動から「活用」に主眼を置いた知財戦略や知財活動、教育の改革に取り組む。また、企業法務の責任者として、コンプライアンスやコーポレートガバナンスの管理・運用に従事。半導体事業及びパソコン等のパーソナル事業に精通。

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