━━ 『特許を斬る!』知財経験34年 ・・・ 愚禿の手記 第60号 ━━
韓国の農業法人が申請した「バーバリーあんぱん」という商標登録が、韓国特許庁で拒絶された。
英国ファッションブランド「BURBERRY」と、ハングル表記が同じだというのが拒絶の理由だ。
これに腹を立てたのが、「バーバリーあんぱん」の申請者だ。
早速、特許審判院に不服申立をした結果、同審判院は、特許庁への差し戻しを命じる逆転審決を下したとのこと。
「バーバリー」という言葉は、韓国の方言で昔から広く使われている言葉のようだ。
さらに、韓国安東地域で有名な特産品に「バーバリーおかき」というのも昔からあるそうだ。
故に、「バーバリー」をあんぱんに使用したとしても「BURBERRY」という商標が希釈化されることはない(商標の対象が全く別の業種)というのが審判院の判断である。
BURBERRYファンにとっては、いささか納得がいかないかも知れないが、バーバリーあんぱんの申請者が、英国ファッションブランドの類似品を出そうと目論んだ訳ではなさそうだ。
どちらも正統派の「BURBERRY」&「バーバリー」といえよう。
このニュースを見た時、『C&C』という登録商標があったことを思い出した。
『C&C』はNECの登録商標で、故小林宏治会長が、コンピュータと通信の融合を企業理念として提唱されたComputers and Communicationsというスローガンの代名詞である。
当時、『C&C』は分かり易いCIマークとして一世を風靡し、『E&E』や『I&I』といったスローガンを各社が後続して使用するようになったのを覚えている。
ところが、東急東横線渋谷駅の構内に「C&C」という看板の店ができたのだ。
この店は、カレー(curry)&コーヒー(coffee)の店だった。
東急東横線の沿線には、NECの玉川事業場や横浜事業場といった中核の工場があったため、NECも遂にカレーとコーヒーを作るようになったかという誤解が生じることを心配し、看板の撤去を求めに商標担当者が渋谷駅まで出向いて行ったことを記憶している。
当のBURBERRYが、パン屋と間違われるのを危惧して、何か対策をとるのかどうかは伺い知れないが・・・
こんな経験もある。
ネットワークプリンタの商品名としてWindows Printing Systemの頭文字をとって『WPS』という商標をもっていた。
ある時、フジテレビの法務担当の方から『WPS』を使わせて欲しいとの連絡を受けた。
フジテレビが、この商標を一体何に使うのだろうか・・???
と思っていたら、
ドラマ「踊る大捜査線」の映画公開記念として、その舞台である湾岸署(Wangan Police Station)の名に因んで、WPSと印刷されたグッズを販売したいとのことだった。
この時は、市場に混乱を招く恐れはなく、むしろ『WPS』という自社商標の宣伝にもなると考え、快くお使い頂いた。
権利者に対して、事前にしっかりと仁義をきるフジテレビの姿勢がとても気持ち良かったのを覚えている。
自分の権利だけを徒に主張する前に、他人の権利を尊重する心があれば、如何にビジネスの世界といえども醜い争いは半減するのではないだろうか。
互いに主張し合うのではなく、共創し合うことで両者がwin-winとなる相乗効果を造りだすこともできるはずだ。
ネット社会の利を生かし、商標を使って共創相手を探してみては如何だろうか。
もしかしたら、夢のような異業種コラボレーションが実現するかも・・・。
バーバリーの服を着て、あんパンを食べてみたくなった。
それでは、また。
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★ 編集後記
ファッションショーでBURBERRYに身をつつんだ
モデルさんが、ランウェイを歩いてポーズをとりながら
バーバリーチェックのパン袋を破いてあんパンをかじる・・・
そんな光景を想像してしまいました(失笑)。