知財と教訓

知財の教訓企業で知財業務35年の経験者が伝えたい知財戦略(知略)のヒント

知財部員は、ヒール役に徹すべし! 「落とし穴」から抜け出る方法:第63号

2015年3月2日

━━ 『特許を斬る!』知財経験34年 ・・・ 愚禿の手記 第63号 ━━

 

『填まった落とし穴』から抜け出す方法・・・

 

それは、一晩寝ること。

 

朝起きて、昨日考えたことを思い返すと、見えていなかった問題が不思議と見えてくるものだ。

 

「寝・歩・車」という言葉がある。

 

人間は、寝る時、歩いている時、そして車の中でヒラメクとよくいわれる。

 

これは、寝れば閃くとか、歩けば閃くとか、車に乗れば閃くということではないらしい。

 

物事を必死になって考え、たとえ壁にぶつかっても考えに考え悩んでいると、ある瞬間にパッと視界が開けるようにアイデアが湧くということのようだ。

 

そう、素晴らしいアイデアを閃めかせるためには、それまでに、どれだけ真剣に考え、悩み抜いたかが重要なのだ。

 

必死になってたどり着いた答え・・・

その時は、それがベストだと誰しもが納得する。

 

しかし、そこには、往々にして目に見えていない欠点や欠陥が潜んでいる。

 

これに気付かないでいると、落とし穴に填まったまま後で後悔することになる。

 

技術者と一緒に特許の回避策を必死になって考え出す。そして、一晩寝てから、もう一度考える。

 

隠れた落とし穴から抜け出す方法としては、実に有効な方法なので、私はよく実践している。

 

それから、もう一つ。

 

技術者が特許の回避策を考える場合、大抵の技術者は、その特許と「形(構成)の違い」を出そうと考える傾向が強い。

 

特許は、ここがこうなっているから、自分は、ここをこう変えたんだ・・・みたいな。

 

しかし、長年の経験から言えることは、形で違いを出しても、完全に回避したことにはならないということ。

 

何故なら、いくら形(構成)を変えてみた所で、やろうとしていることは同じだからだ。

 

いわゆる、均等論の世界なのだ。

 

回避とは、違いを持たせることではなく、改良・改善することである。

 

そのためには、相手の特許の欠点を徹底的に探し出すのがポイントだ。

 

「形」に主眼を置くのではなく、「欠点」に主眼を置くべきである。

 

均等回避ではなく、改良回避・改善回避でなければならない。

 

しかし、言うは易く行うは難し。技術者にとっては、かなり高いハードルとなる。

 

この高いハードルを越えさせるのが知財部の仕事なのである。

 

この局面では、技術者にとって、知財部は最もうるさい厄介者にならなければならない。

 

「どうせ考えもしないくせに」とか、

「無理難題だけを押し付けて」とか、

批判されるようでなければ、一人前の知財部とは言えない。

 

特許回避の場面では、知財部員は妥協なきヒール役に徹しなければならないのだ。

 

技術者から悪口雑言を浴びせられるようになれば、知財部が「隠れた落とし穴」に填まっていない証拠といえよう。

 

非常に酷な役回りだが、これを乗り越えて回避できた時の歓びはまた格別だ。

 

その時、知財部にいることの存在意義を実感した一人である。

 

 

それでは、また。

 

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★ 編集後記

 

昨年、知的財産権の侵害事件で警察に告発された件数が過去最多を更新したようです。

 

中でも、トレードシークレット(営業秘密漏えい)事件は、倍増したとのこと。

 

秘密漏えい事件が増加するのは、経済状況が悪化した時と、相場は決まっています。

 

漏えいした方の罰則を強化すると同時に、された方にも罰則を設ければ良いのではないでしょうか。

 

働き甲斐のある職場、辞めたくない会社にすることが漏えい防止の最善策だと思います。

 

知財法務コンサルタント
堤 卓一郎

埼玉大学理工学部電気工学科卒
日本電気株式会社に入社。以来34年間知的財産及び企業法務に従事し、 特許技術部長、知財法務事業部長、監査役を歴任。在籍中は、多くの国内及び海外企業との知財関連訴訟やライセンス契約の責任者として事件解決や紛争処理に努め、一方で「取得」主体の知財活動から「活用」に主眼を置いた知財戦略や知財活動、教育の改革に取り組む。また、企業法務の責任者として、コンプライアンスやコーポレートガバナンスの管理・運用に従事。半導体事業及びパソコン等のパーソナル事業に精通。

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