知財と教訓

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いい発明は、今も現役で活躍中 『鉄条網(有刺鉄線)』の発明の凄いところとは!:第64号

2015年3月9日

━━ 『特許を斬る!』知財経験34年 ・・・ 愚禿の手記 第64号 ━━

 

世界の3大発明は、「機関銃、戦車、そして鉄条網」だと聞いたことがある。

 

どれも、軍事用の発明だが、個人的には鉄条網の発明に惹かれる。

 

そういえば、米国特許第1号は鉄条網の発明だと何かの本で読んだことがあった。しかし、これはどうも嘘っぽい。

 

第1号は、蒸気機関車の駆動輪だという説もある。

 

アメリカの特許DBで調べるとわかるかも知れないので、興味のある方は、どうぞ・・・。

 

それはさておき、何故、鉄条網の発明に惹かれるかというと、必要に迫られた人の知恵から創造されたものだからだ。

 

まさに、「必要は発明の母」という言葉を理解するのに恰好の事例ではないだろうか。

 

鉄条網(有刺鉄線)発明の凄さは、右(内)から見た課題と左(外)から見た課題の両方を同時に解決していることである。

 

家畜の逃亡を防ぐという右から見た課題と、外敵の侵入を防ぐという左から見た課題だ。

 

しかも、これら2つの課題(逃亡と侵入)は、真逆の関係にある。

 

一方向から見える課題を解決して発明だと思っている人も多いが、実は、それは1/2発明(発明半分)なのである。

 

残りの半分は、裏側から見た課題を解決すること。

 

言い換えれば、何かをやろうとして躓いた時の課題を解決するアイデアで発明の半分が完成し、

 

次に、それを実際にやってみて、

 

思うように上手くいかない場合や、もっと良くなるはずだと更に欲を出して挑戦した時に出て来るアイデアで残りの半分が完成する。

 

こうして出来た発明は、完成度の高い発明といえよう。その証拠に、鉄条網は現在でも大活躍しているのだから。

 

以前、このメルマガで、発明は「二つの壁(目の前の壁と、その後ろに隠れた壁)」を越えなければならないと書いたことがあったが、鉄条網の発明が、まさにこの二つの壁を乗り越えた発明といえよう。

 

前号で、サンヨー食品が開発したストレート麺が嵌まった落とし穴について述べたが、先行する日清のストレート麺と同じ麺を開発することまでは成功したものの、それを一歩超える所までは至っていなかったということだ。

 

1/2発明で止まってしまっていたのだろう。

その結果が、裁判の途中で製造変更しなければならない羽目に陥ったのではないだろうか・・・

 

作って見て、味も質も日清に劣らない麺ができた。その苦労は大変だったはず。

 

しかし、それでも発明半分の域を出ていなかったのだ。残りの半分は、出来た麺をあと一歩進化させること。

 

この『あと一歩』が大切なのだ。

 

そのためには、発明が完成したと思った時点で、左右2つの課題を同時に解決したかどうかを一度見直してみるといいだろう。

 

ただし、2つの課題とは、性質の異なる真逆の課題だということに注意すべきだ。

 

そして、この真逆の課題は、視点を逆転させなければ見えてこないという点にも注意が必要だ。

 

しかし、現場の技術者が自ら視点を変えることは、なかなかできるものではない。

 

その役目は、知財の担当者だ。

両者の共同作業が、偉大な発明の完成には不可欠といえよう。

 

 

それでは、また。

 

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★ 編集後記

 

BS放送で『坂の上の雲』を見ていたら、ちょうど203高地奪回戦の模様が放映されていました。

 

幾重にも張り巡らされたロシア軍の鉄条網に、日本軍が苦しんでいました。

 

外国映画ではよく目にする鉄条網ですが、日本の時代劇では殆ど見たことがありません。

 

日本人は一点集中型、外国人は多点併眼型。見方も発想の仕方も大きく違うようです。

 

海外との争いでは、要注意!!

知財法務コンサルタント
堤 卓一郎

埼玉大学理工学部電気工学科卒
日本電気株式会社に入社。以来34年間知的財産及び企業法務に従事し、 特許技術部長、知財法務事業部長、監査役を歴任。在籍中は、多くの国内及び海外企業との知財関連訴訟やライセンス契約の責任者として事件解決や紛争処理に努め、一方で「取得」主体の知財活動から「活用」に主眼を置いた知財戦略や知財活動、教育の改革に取り組む。また、企業法務の責任者として、コンプライアンスやコーポレートガバナンスの管理・運用に従事。半導体事業及びパソコン等のパーソナル事業に精通。

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