━━ 『特許を斬る!』知財経験34年 ・・・ 愚禿の手記 第78号 ━━
日本の電機業界は、一体どうなってしまったのだろうか?
メチャメチャなのは、粉飾決算が露見した東芝だけではない。
日立の不正入札、ソニーのプレステ個人情報ハッキング、NECグループ社員の横領、富士通の銀行データ不正取得、等々、事例を挙げればキリがない。
でも、これは何も今に始まったことではない。
この手の問題は、昔から大なり小なり色んな会社で起きていたことだ。
コンプライアンスだの、CSRだのと、いくら叫んでみてもなかなか収束しない根の深い問題だ。
そして、このような不祥事は会社の業績が上向きの時より、下降低迷している時期に露見することが多いような気がする。
さらに、「臭いものには蓋をしろ」的な隠ぺい工作が、逆に内部告発や風評被害を招き、ますます立場を悪化させてしまう。
私なりに考えてみたのだが、これは、自信のないことを隠そうとする日本人の悪習に原因があるのではないだろうか。
業績が悪化すると、どの会社も途端に守りの姿勢に入ってしまう。
これも、言ってみれば、自信の無さを隠そうとする体質の現れか・・・
しかし、隠そうとする限り、自信の無さを克服することが出来なくなるのも事実だ。
隠すことに必死になって、自信をつける余裕が持てなくなるからだろう。
何故、こうも隠したがるのか・・・?
恐らく本音は、「会社を守るため」だと思う。
しかし、これが大きな間違いなのだ。
会社を守っているのは誰か! 社長や社員ではないはず。
会社を守っているのは、『お客様』なのだ。
社長や社員の役目は、そのお客様を守ること。
従って、苦境に立たされた時こそ、隠すのではなくこれから会社がどうしようとしているのかをはっきりとお客様に知らせるべきではないだろうか。
以前、ジャパネットたかたが、社員の不祥事で顧客情報を流出させたことがあった。
当時、高田社長とお会いした時、こんな話を聞いた。
「どうやったら個人情報の流出を止められるかよりも、どうしたらお客様に迷惑がかからないようにすることができるか、ただそれだけを考えていた。」と。
お客様へのアナウンスも早く、かつ適切だった。
自らが決断した営業自粛の姿勢も大いに評価できる。
ジャパネットの快進撃は、ここから始まったと言っても過言ではないように思う。
決して隠そうとはしなかった高田社長の考えは、大いに見習うべきだろう。
先日、日経新聞で、経営不振に喘ぐシャープが、追い打ちをかけるようにスマホの特許侵害で米国の特許管理会社(パテントトロール)から訴えられたとの記事を見た。
相手がトロールなので、シャープは防戦一方を強いられることになるだろう。
しかし、忘れてはならない。
故意の侵害は別としても、他人の特許を黙って侵害する技術者は何処にもいないということを。
侵害訴訟は、お客様により良い商品を届けたいとの思いで必死に開発した結果の事故とも云える。
自分達は被告だからと決して卑屈になることなく、堂々と戦ってもらいたい。
そして、その戦いの様子を一人でも多くのお客様に知って貰うよう包み隠さず随時公表していって欲しい。
自分達が如何に真剣に技術と向き合っているか、どれだけお客様のことを大切に思っているか、を理解してもらう絶好の機会だと捉えて。
訴訟は何も法廷の中だけで争われるものではない。
法廷の外でも毅然とした態度で、弱みに付け込む輩に是非一矢報いて欲しいものだ。
ピンチはチャンス!
お客様は、必ず見ていてくれると信じ、今まで見たこともないような戦い方で、事業回復の突破口とすべく果敢に挑んで頂きたい。
絶対できると、己を信じて。
それでは、また。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★ 編集後記
インターネットの普及で、人の行動範囲が狭くなったような気がします。
ウィンドウショッピングも減り、旅先での想定外の驚きに感激するケースも少なくなりました。
いい意味での「ゆとり」がなくなってしまったような寂しさを感じる今日この頃です。
そう云えば、ゆとり教育が残したのは、「ゆとり」ではなく「さぼり」だったような・・・