知財と教訓

知財の教訓企業で知財業務35年の経験者が伝えたい知財戦略(知略)のヒント

コロナ禍でのリモート知財 - 今だからこそ、やるべきこと! -:第91号

2021年12月28日

━━ 『特許を斬る!』知財経験34年 ・・・ 愚禿の手記 第91号 ━━

 

コロナ禍で、私たちのライフスタイルもワークスタイルも大きく変化しました。

 

私のセミナーも、臨場感を基軸とした集合スタイルから、リモートによるマンツーマン・スタイルへと舵切りを余儀なくされました。しかし、実際やってみて言えることは、それぞれに一長一短があるということです。

 

集合セミナーでは、受講者の反応を確認しながら講義を進められますが、リモートではそうはいきません。一方、Q&Aで見ると、集合よりリモートの方が質問し易い雰囲気があるようです。

 

そして、もう一つ、決定的に差が出るのは、リモートは場所を選ばないということです。「好きな場所」で聴くことが出来る。この差は非常に大きいようです。

 

更に、「好きな時」に聴けるようになれば、もっと自由度が増して良くなるのかも知れません。

 

「好きな時」に観てもらうには、お客様の方で初回のセミナーをビデオに撮っておいてもらい、それを好きな時に観てもらうやり方があります(ただし、何人観たかを自己申告してもらう必要がありますけど)。

 

もう一つの方法は、講師の方でビデオを用意し、そこにアクセスしてもらって聞いてもらうのも手です。ただし、この場合、質問の答えは、後日ということになりますけど。

 

いずれにしても、受講者にとって最も効果的であると思われるやり方でアレンジしながら進めて行くことが大事です。

 

また、セミナーの内容によって、受講スタイルを変えることも重要です。

 

例えば、講師が情報を提供して、受講者がそれを理解し自分の行動に取り入れる意識改革や意識啓発を目的とした情報収集型セミナーであれば、好きな時、好きな場所で受講できる受講者主導のスタイルが適しています。一方、あるテーマに関して、講師からの指示に基づいて自ら考えたり、あるいは、仲間と議論したりして解決策を導き出す課題解決型セミナーであれば、場所や時間に制約があるものの、全員が共通のテーマに集中して没頭できるスタイルが適すると言えるでしょう。

 

このようにセミナーの目的や内容によって受講スタイルを変えることで、リモートの弱点を補うことは可能です。

 

しかし、最も大事なことは、受講者の参加意識なのです。

 

以前の話になりますが、ある開発グループのメンバーと会社の保養所を借りてアイデアを出し合う研修会を金曜の夜から日曜の昼までハードスケジュールでやったことがあります。

 

参加したのは私を含め知財部のメンバー3人と開発部のメンバー8人の計11人です。

 

テーマは、次期開発予定の新製品に必要な技術アイデアの創出でした。

 

会社が終わって金曜の夜に保養所に集合したメンバーは、食事とお風呂を済ませて会議室に集まりました。早速、新製品のコンセプトが発表され、アイデア出しに入りました。夜食とドリンクも用意されましたが、それは夜中の3時以降解禁ということしました。

 

一日目は、全く不作でした。誰もが、今の技術の延長線を見て、欠点の出し合いとアイデアの中傷合戦ばかりでした。夜中の3時を過ぎると、皆さん飲み始め、それ以降は議論が発散して収まりがつかなくなり解散となりました。

 

翌日の土曜日、遅い朝食を済ませて会議室に集まったメンバーは、昨夜と同じ議論を蒸し返したり、新しいアイデアが出されてもマイナス面の議論だけで頓挫したり、前進は一向に見られませんでした。

 

夜の食事を済ませて集まった時、メンバーの一人がこう言いました。

 

「今の技術は忘れて、夢を語り合いましょう。」

この一言が、重苦しかった雰囲気を一変させたのです。

 

それからでした。驚くほど斬新なアイデアが湯水のように湧き上がってきたのは。

 

議論も、否定型から提案型へと変わりました。昨日のあの光景は一体何だったのだろうか? とても、同じメンバーとは思えない。

 

結局、ホワイトボードを埋め尽くす程のアイデアが量産されました。その中から、トップ10を決め、皆が特にやってみたいと手を挙げた4つのアイデアが次期製品の目玉として採用されました。

 

参加者の意識が同じ方向を向いた時、思いもよらぬ成果が産れることを実感できた貴重な経験でした。

 

リモートによる知財セミナーがハンディになることはありません。

 

大切なのは、参加者に共通の場(同じ空間)を与えてやること、そして、参加の意義(目的)を理解してもらうことだと思います。

 

場が与えられ、目的を理解したら、人は前に進むことが出来るのです。そして、全員の意識が一つになった時、予想もしなかった成果が得られるのも事実なのです。

 

コロナ禍のこんな時期だからこそ、セミナーを使って新たな挑戦をするのも悪くありません。

 

YES,WE CAN!!

 

アメリカ前大統領オバマ氏の名文句です。

 

それでは、また。

 

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★ 編集後記

 

コンサルタントの仕事は、「答えを教える」のではなく、「答えの求め方」を教えることだと思っています。

 

従って、私のセミナーでは、答えを出すのは受講者の皆様です。

どんな答えが出るのか、毎回楽しみです。

 

何故なら、全く同じことをやっている会社は、世の中に2つとないのですから。

それぞれの会社の個性と特徴を生かした答えが導き出された時は、思わず心の中で万歳をしてしまいます。

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知財法務コンサルタント
堤 卓一郎

埼玉大学理工学部電気工学科卒
日本電気株式会社に入社。以来34年間知的財産及び企業法務に従事し、 特許技術部長、知財法務事業部長、監査役を歴任。在籍中は、多くの国内及び海外企業との知財関連訴訟やライセンス契約の責任者として事件解決や紛争処理に努め、一方で「取得」主体の知財活動から「活用」に主眼を置いた知財戦略や知財活動、教育の改革に取り組む。また、企業法務の責任者として、コンプライアンスやコーポレートガバナンスの管理・運用に従事。半導体事業及びパソコン等のパーソナル事業に精通。