知財と教訓

知財の教訓企業で知財業務34年の経験者が伝えたい知財戦略(知略)のヒント

  • 2014年8月4日

    記憶に残る特許の契約交渉 「バットは振らなきゃ当たらない」の教え:第37号

    ━━ 『特許を斬る!』知財経験34年 ・・・ 愚禿の手記 第37号 ━━   (前号の続き)   A社に立ち向かう作戦・・・ それは、かつてない全面戦争である。   会議室に部下を集め、A社からのプレゼン内容を一通り説明した後、私は次のような指示を出した。   「今日から2ヶ月間で、A社対抗特許を50件揃えたい。必ず50件、いや出来れば60……
  • 2014年7月28日

    記憶に残る特許の契約交渉 「バットは振らなきゃ当たらない」の教え:第36号

    ━━ 『特許を斬る!』知財経験34年 ・・・ 愚禿の手記 第36号 ━━   ♪ 足りない頭なら、知恵を盗みゃいい。帳尻合わすなら、嘘も必要さ・・・   巷では、バブルガム・ブラザーズの『WON'T BE LONG』が流行っていた頃、   私は、アメリカのある大手半導体メーカ(A社)と特許クロスライセンス交渉の真っ只中にいた。   A社とは、……
  • 2014年7月22日

    経験者が語る知財紛争の教訓 『訴訟への決断!』・・・被告の裏事情(結末):第35号

    ━━ 『特許を斬る!』知財経験34年 ・・・ 愚禿の手記 第35号 ━━   アメリカ出張から戻って2日後、国内のある大手半導体メーカから電話をもらった。   「やっと、ライセンスを貰うことができました。これで、一安心です。御社も遅れない方がいいですよ。」   受話器を置いた後、「ふざけるな!大きなお世話だ。」と思わず声を出してしまった。   ……
  • 2014年7月14日

    経験者が語る知財紛争の教訓 『訴訟への決断!』・・・被告の裏事情(その5):第34号

    ━━ 『特許を斬る!』知財経験34年 ・・・ 愚禿の手記 第34号 ━━   突如、浮上した巨大なサブマリン特許に戸惑う日本企業・・・   こちら側にいくら強力な特許があったとしても事業をしていない個人相手では、全く通用しない。   しかも、相手はアメリカ合衆国のプロパテント政策という後ろ盾に守られている。我先にとライセンスを取得した企業もあるという。 ……
  • 2014年7月7日

    経験者が語る知財紛争の教訓 『訴訟への決断!』・・・被告の裏事情(その4):第33号

    ━━ 『特許を斬る!』知財経験34年 ・・・ 愚禿の手記 第33号 ━━   意見交換と称して集まったのは4社だった。いずれも警告書が送られてきたメーカの代表者である。   彼等の意見は、ほぼ同じで、   「放っておいたら、訴訟になるだろう。」 「訴訟になったら、米国での営業に支障が出る。」 「何とか、訴訟だけは避けたい。」 「しかし、妙案がない。」……
  • 2014年6月30日

    経験者が語る知財紛争の教訓 『訴訟への決断!』・・・被告の裏事情(その3):第32号

    ━━ 『特許を斬る!』知財経験34年 ・・・ 愚禿の手記 第32号 ━━   社長を前に、今回の事件について、順を追ってその事実関係を説明し、勝てる確率は正直50%にも満たない旨、報告した。   一通り話し終えるまで、じっと聞いていた後、社長の口から発せられた一言。   それは、「四分六なら、戦え!」という言葉だった。   これは、40%の勝……
  • 2014年6月23日

    経験者が語る知財紛争の教訓 『訴訟への決断!』・・・被告の裏事情(その2):第31号

    ━━ 『特許を斬る!』知財経験34年 ・・・ 愚禿の手記 第31号 ━━   サブマリン特許・・・   それは、まさに潜水艦のように、いつ浮上するかわからない特許のことである。   当時、米国は国策として、特許公開制度を採用しておらず、非公開制度を維持していた。   従って、特許として成立するまでの間は、誰の目にも触れることはなかった。 &……
  • 2014年6月16日

    経験者が語る知財紛争の教訓 『訴訟への決断!』・・・被告の裏事情(その1):第30号

    ━━ 『特許を斬る!』知財経験34年 ・・・ 愚禿の手記 第30号 ━━   ある夏の日、社長宛に届いた書簡が、秘書室から転送されてきた。   中身は、アメリカの法律事務所から送られてきた一通の書状である。   そこには、「貴社の製品が米国特許に抵触しているから、製造・販売を中止するか、もしくは、ライセンス料を支払うか、いずれか回答されたし。」との内容が書……
  • 2014年6月9日

    経験者が語る知財紛争の教訓 『訴訟への決断!』・・・権利者の裏事情(その6):第29号

    ━━ 『特許を斬る!』知財経験34年 ・・・ 愚禿の手記 第29号 ━━   (前号の続き)   『交渉の原点』・・それは、素直になること。 駆け引きを止め、相手から本音を引き出すこと。   そのためには、こちらが、飾らず、驕らず、本音をぶつけること。   そのタイミングは、今だ。   我々は、売上高不利のリスクを背負いつつも……
  • 2014年6月2日

    経験者が語る知財紛争の教訓 『訴訟への決断!』・・・権利者の裏事情(その5):第28号

    ━━ 『特許を斬る!』知財経験34年 ・・・ 愚禿の手記 第28号 ━━   (前号の続き)   着席した相手役員は、我々を見ながら「お待たせして申し訳ない。当社の方針が決まったのでお伝えしたい。」   そう言って持参した書類に目を落とした。   交渉成功か、それとも、決裂か・・・緊張の一瞬である。   K・・「本件、契約締結の……
知財法務コンサルタント
堤 卓一郎

埼玉大学理工学部電気工学科卒
日本電気株式会社に入社。以来34年間知的財産及び企業法務に従事し、 特許技術部長、知財法務事業部長、監査役を歴任。在籍中は、多くの国内及び海外企業との知財関連訴訟やライセンス契約の責任者として事件解決や紛争処理に努め、一方で「取得」主体の知財活動から「活用」に主眼を置いた知財戦略や知財活動、教育の改革に取り組む。また、企業法務の責任者として、コンプライアンスやコーポレートガバナンスの管理・運用に従事。半導体事業及びパソコン等のパーソナル事業に精通。

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